ゴキブリ

【第1 章】まず、敵(ゴキブリ)を知ろう!

あなたは、ゴキブリのことをどれだけ知っていますか?
ゴキブリの生態を知らずに、ただやみくもに駆除しようとして
も、結局はイタチごっこになってしまいます。
そう、敵をやっつけるには、まず敵を知ることが大事なのです。
そこで本章では、敵=ゴキブリの生態について説明します。

■恐竜よりも前から生息しているゴキブリ

ゴキブリは一体、いつごろからこの地球上に生息しているのでしょうか?
ゴキブリの祖先が出現したのは、なんと約3 億年前の古生代石炭紀。
恐竜が生まれる前から今日まで絶滅せずに生き残り、しかもほとんど姿を変えていない
ため、「生きている化石」ともいわれています。
世界には約4,000 種類ものゴキブリがいます。
そのうち日本に生息しているのは50 種類あまりですが、約40 種類は野外で生活して
います。
ただし、何億年も前から絶滅せずに生き続けているほどのすごい生命力を持つゴキブリ
は、条件さえ整えば、とくに屋内では、どの地域にも定着します。

〈主なゴキブリの種類〉
◇クロゴキブリ
家庭でよく見かけるのは、この「クロゴキブリ」です。
その名の通り黒色のゴキブリで、体長は30~40 ミリくらい。
ビルでは厨房や湯沸かし場に多く見られます。
隣の家から侵入することも少なくありません。

◇チャバネゴキブリ
飲食店やビルなどで見かけるのは、この「チャバネゴキブリ」です。
小型のゴキブリで、体長は成虫で12~15 ミリ程度。
体は黄褐色で、前胸背面に1 対の細長い黒斑があります。
建築物の温暖化が増加させた典型的な都市型害虫です。
オフィスビル、レストラン、ホテルなど、暖房の行き届いた建築物や施設に多く生息し
ます。

◇ワモンゴキブリ
わが国では最大級のゴキブリで、体長40 ミリくらい。
体全体が茶褐色で、前胸背板に黄色の斑紋があります。
主に九州南以南に見られます。
デパートや地下街など暖房が行き届いたビルでは、もっと北の地域でも定着した場所が
多くあります。

◇トビイロゴキブリ
ワモンゴキブリに似ていますが、少し小型です。
ワモンゴキブリと同じような環境で見られます。

■知っているようで知らないゴキブリの生態

自分の家にゴキブリが棲みついているかもしれない…。
そう考えるだけで、かなりのストレスになる人は少なくないでしょう。
しかし、退治しても退治しても、またどこからか現れるのがゴキブリです。
では、あなたはそんなゴキブリのことを、どれだけ知っていますか?
「そんなことより、早く、即効性のある退治法を教えて!」と思うかもしれませんが、
目にしたゴキブリを殺虫剤で殺せば、もう安心!でしょうか?
いえいえ、思い出してください。
大事なのは、
即効性のある撃退法と、持続性のある防御法を組み合わせること。
遠回りしているように感じるかもしれませんが、敵を知ってこそ、真に効果のある撃退
法を、より効果的に活用できるのです。
勉強でも基礎が大事。
基礎を身につけてこそ、応用問題も解けるということをお忘れなく!

〈ゴキブリの一生〉
●耐久力は想像以上!
ゴキブリは非常に耐久力があります。
食べ物や水なしでは生きられないだろう、などと侮ってはいけません。
そんな過酷な条件下でも、ゴキブリは長期間、生存できます。
この他にも、ゴキブリにはまだまだあなたが知らない驚きの生態が…。
それらを知らずして、根本的な駆除はできないのです。
ここからは、家庭でよく見かける「クロゴキブリ」と、
飲食店などで見かける「チャバネゴキブリ」の2 種類にしぼって説明していきまし
ょう。

◇クロゴキブリ
◎一度に産む卵は15~20 個
クロゴキブリのような大型のゴキブリは、小型のゴキブリ(チャバネゴキブリなど)に比
べると幼虫期間が1 年以上と長いのが特徴です。
雌のクロゴキブリは、卵鞘と呼ばれるカプセルのような鞘の中に、大体15~20 個の
卵を持っています。
その卵鞘を数日で産み落とし、唾液などで引き出しの中などに固着します。
孵化するまでの期間は、大体1カ月ほどです。
孵化した幼虫は10 回程度の脱皮を繰り返し、成虫になります。
寿命は2 年から2 年半くらいといわれています。

◇チャバネゴキブリ
◎一度に産む卵の数は30~40 個
小型のチャバネゴキブリは繁殖力が非常に旺盛です。
25℃で飼育した場合、成虫は交尾後、約10 日で産卵を始めます。
1個の卵鞘の中の卵の数は30~40 個。
卵の期間は3~4 週間で、孵化する直前まで雌の尾端に付けられたままです。
そして、雌は卵を落とす前に隠れ家に入ります。
孵化した幼虫は5回の脱皮を繰り返し、6 齢を経て、成虫になります。
幼虫の期間は25℃では約60 日ですが、27℃では約45 日、20℃では220 日という研究結
果があります。
成虫の寿命は、雄で約90 日、雌で約165 日。
短いと思って安心してはいけません!

雌は1カ月ごとに1 回、一生の間に平均して4 回卵鞘を産みます。
つまり、1 匹の雌から約150 匹もの子が産まれることになります。
さらに、約60 日後、最初の卵鞘から孵化した幼虫は、卵を産める成虫となり
ます。
もし、それらの幼虫の半分が雌だったら…。
1 年後には恐ろしい数のチャバネゴキブリが発生することになるのです。
チャバネゴキブリは、日本では加湿していない建物内で冬を越すことはできません。
しかし、コンクリート造りの暖房設備がある建物の中では一年中生息し、繁殖していま
す。
ゴキブリを1 匹見かけたら30 匹いると思え!(この数字はさまざまです)
と言われるのは、ゴキブリのこうした繁殖力のすごさゆえなのです。

〈ゴキブリの習性〉
●サナギの時期がない不完全変態
ゴキブリは、卵→幼虫→成虫という段階を経て成長し、サナギの時期がありません。
このような変態をする昆虫は、一般的に幼虫と成虫の食物や生活場所が同じです。
●好き嫌いはなし!
ゴキブリは、穀類、野菜、果物、魚、肉、お菓子など人が口にするものは、ほとんど何
でも食べます。
それどころか、人や動物の排泄物、髪の毛、垢、配水管などにこびりついた汚泥、脂、
紙なども食べます。
食べないものを探した方が早いくらいです。
エサとなるものを置かないといった環境対策だけでゴキブリを根絶できないのは、ゴキ
ブリのこの食性の広さが大きな理由のひとつとなっています。

●飛ぶゴキブリ、飛ばないゴキブリ
ゴキブリには立派な羽根があります。
クロゴキブリを退治しようとしたら飛んだ!という話をよく聞きます。
確かに大型のゴキブリは飛びますが、あまり上手には飛べません。
一方、小型のチャバネゴキブリは全く飛ぶことができません。
移動はもっぱら、歩行が中心です。
ゴキブリの脚はよく発達していて、走るのが速く、スケールスピードはなんと時
速300 キロにもなります。
●ゴキブリは夜型
昼間、ゴキブリを見かけないような場所でも、夜中に突然電気をつけたら「ゴキブリが
いた!」ということがよくあります。
これは屋内に棲むゴキブリが夜行性だからです。
ただし、夜行性といっても一晩中活動しているわけではなく、夜の前半に活動の山が
あります。
この活動は、ゴキブリが持つ特有の活動リズム、つまり体内時計によって支配されてい
るようです。
通常とは違う生活リズムで、明と暗の時間帯が異なっている場所では、ゴキブリの活動
リズムもずれることがあります。

●暖かいところが好き
種類によって好みの温度は多少異なりますが、チャバネゴキブリは大体25℃~
31℃くらいの温度を好みます。
多少、室温が低くても、冷蔵庫やテレビ、自動販売機などの電気製品、配電盤、
ガスレンジ、スチームパイプのまわりなどの暖かい場所に潜みます。
最近は温暖化が進んでいる上に、気密性の高い家が多く、冬でも暖房が効いているため、
暖かいところが好きなゴキブリにとっては、ますます棲みやすい環境になっているとい
えそうです。
●狭いところが好き
人間と違い、ゴキブリは背と腹の両方が接触するような隙間を好みます。
チャバネゴキブリは5 ミリくらい、クロゴキブリで1 センチくらいの隙間で
す。
室内には、この程度の隙間は山ほどあります。
例えば、昼間や照明が明るいときには、戸棚やロッカー、引き出しの奥、壁の内部や壁
と調度品の隙間など、狭くて暗い場所に潜んでいます。
特に電気機器の内部は暗くて暖かく、しかも隙間がたくさんあるので、恰好の潜伏場
所になります。
ゴキブリは、ヒゲがセンサーとなり、壁と床面のすみや隙間などにそって移
動します。よほどあわてたときでない限り、広い面を横切るようなことはありません。
大体、壁際から5 センチ以内のところを通ることが多いようです。
※この性質をよく理解しておけば、より効率よくゴキブリを駆除することができます!

●水さえあればOK!
ゴキブリは水をよく飲みます。
1 滴の水で2 週間以上生きるともいわれているほどで、エサがないことよりも
水がないことの方が、ゴキブリにとっては辛いのです。
特にチャバネゴキブリは、水さえあれば1 カ月以上生きますが、水がない状態では、い
くらエサがあっても、水分が少ないエサだけでは1 週間以内に死んでしまいます。
この傾向は、温度が高くなるほど強まります。
流し台など水気のある場所を主な活動場所にしているのは、そのためです。
●同じ場所に集まる
ゴキブリは、一度集まった場所に再び集まる性質があります。
例えば、ゴキブリがたくさん集まっている場所に1 日間でも置いておいたベニヤ板には、
他のベニヤ板よりも確実に、たくさんのゴキブリが集まります。
これは、ゴキブリが他のゴキブリを引き寄せるフェロモンという物質(集合
フェロモン)を出すためです。
温度が下がると集合する傾向が、より強くなります。

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さぁ、これであなたも、ゴキブリの生態は大体、理解できたに違いありません。
では、どうしてゴキブリを駆除しなければならないのでしょうか?
ゴキブリが嫌いだから。
ゴキブリは気持ち悪いから。
確かに、見た目のグロテスクさから嫌われているゴキブリですが、実は決して見過ごす
ことのできない、もっと大きな理由があります。
ゴキブリの一番の害、それは“衛生面”です。
そこで、第2 章では「ゴキブリがもたらす害」について、ご紹介しましょう。
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